小泉源一「伊豆大島野生ノ桜」『植物学雑誌』第26巻(通巻305号) 1912年5月20日
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伊豆大島野生ノ桜
                          小泉源一

吾人ハそめゐよしのざくら(Prunus yedoensis, MATSUM)/ハ伊豆ノ大島ニ原産スト又ハ同島ヨリハたきヾざくら又おほしまざくらナルモノヲ産スト或ハ又同島ノさくらハ之レやまざくらナリナド種々の話ヲ聞キタリ。依テ本春此島ノ桜ハ元来何ナルカ之ヲ決定センガ為メニ開花期ヲ待テ同島ニ到リテ検シタルニ全ク小生ノおほやまざくら(Prunus donarium, var. species, KOIDZ. = Pr. jamasakura, β, speciosa, KOIDZ.)ナルヲ知レリ。

此おほやまざくら(一名たきヾざくら又ハおほしまざくら)ハ同島ニテやしやぶし、みづきト混交林ヲ作リ以テ東京ニ輸出スル薪炭材料トナルモノニシテ元来同島ニ野生ナルモノナルコトハ有名ナル桜株ノ名所ノ野生古木ヲ見レバ明ニ想ヒ得ベシ

而シテそめゐよしのノ自生ハ之ヲ発見スルコト能ハザリキ小生想フニ此桜ハえぞやまざくらトひがんざくらノ中間ノ性質ヲ有スリニヨリ此二種ニ関係アリトスレバ何レヨリ突然変化ニヨリテカ又ハ以上二種ノ交配ニヨリテ生ゼシモノニハ非ルカ

おほしまざくらハ其果実大ナルヲ以テ之ニ淘汰ヲ行ハヾ優ニ日本ノ桜桃トナシ得ルモノナラン。

※原文の旧字体は新字体に改めました。仮名遣いは原文のままです。